
塾長
野口哲英
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■病院チェーン
展開側 される側
チェーン展開が医療資源の効率化や技術 の向上と均質化、さらにはサービスの向上や情報のシステム化による患者利便性の向上、医療費の削減などに貢献ならば、社会杓に大いに歓迎されるべきことである。
チェーン化や系列化は世の中の大きな流れであるが、医療は生命に関基本杓な産業であることから、間違った方向に走り消費者に害を与えることがないよう充分に監視されなければならない。
■チェーン化側の論理
さてチェーン化側の論理により、その方法をいくつかあげてみる。
ベッド規模を拡大ことにより人員の効率化、原材料仕入れに対バーゲニングパワーの獲得、サービスの均質化と知名度やブランド力の確立ができる。そのためには、がいなかったりして、いずれ廃院したいと思っているところ。
1. 100床前後の負債の少ない病院で、経営力が弱かったり、後継者がいなかったりして、いずれ廃院したいと思っているところ。
2. 医療面の薄い老人病院や療養型病床群、透析病院、その他ヘルスケア施設(老人保健施設、特養、ホームケア、フィットネス)など非ドクターでも経営がやりやすい分野。
3. システム化しやすい300床以上の規模の病院。
4. 技術職たるドクターが比較的得意でない医療と介護、福祉を包括した多様かつ包括サービス化したマルチシステム分野。
等があげられる。
そして、経営の手段としては、
1. 吸収や合併等を行って直接経営を行う方法で、資金や総合的な人材力が必須となる。
2. 経営の指導や業務の管理、委託などを行ってロイヤリティーや受託料を得る方法で、コンサルティング能力が求められる。
がある。
ただし、2の場合、経営管理を受けるオーナー側にとって事務長や婦長といった幹部を送り込まれたり、医療法人に親族間による内紛に乗じて社員や評議員に人を送り込まれたりすれば、経営権は完全に失われ、いわゆる乗っ取りととられる恐れがある。
■自院がチェーン展開に巻き込まれないために
チェーン展開や系列の傘下に入れば当然のことであるが、たとえトップとして従前の理事長や院長が経営陣に残ったとしても、経営の自由さや後継者の指名はできないと覚悟しなければならない。
また、むしろ従前にも増してハードに働かされたり、他の傘下の病院と競争させられ、時にはトップとしての人格や尊厳さえ否定されることもあると覚悟しなければならない。
たとえば昨今、大手コンビニエンスストアのフランチャイジーから同一グループ内での競合をせまられ裁判沙汰になっている例からも想像できよう。
自院がチェーン展開側ならまだしも、されないためには、どうかいくつか対策を述べよう。
1. 高まいなロマンの確立職員の全員参加
トップのロマンにかけるひたむきな行動と職員が共にそれを達成喜びを共有ことにより、誰にも犯すことのできない強い経営となる。
2. 企業は人なり
まずロマン達成のための後継者の育成と、リーダーたる幹部職員の育成である。育成はロマン達成という楽しい課題を達成ための各人の役割分担によって人は育つものであり、ロマンや目標なくしていくら教育をしても人は育たないと知るべきである。
3. 親族や仲間との内部紛争や分裂を起こさないよう常に信頼感を強化ことである。
4. 資金繰りに窮しても高利貸等のマチ金融に絶対手を出してはならない。ますます深みにはまり込み、その結果暴力団の介入さえ許すことになる。
5. 経営のユニーク性、オンリーワン主義を貫き続け周辺医療機関の平均値に安住してはならない。
6. 医療の技術屋集団が経営してゆくためには、不得意な分野に経営を広げる多角化や組織の複雑化を避け、わかりやすくより単純化した経営でなければならない。
企業生存30年、「老害」 とならぬうちに早めに後継者にバトンタッチしなければならない。
(1999年9月号掲載)
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