
塾長
野口哲英
|
■経営は誰も守ってくれない
わが国経済の今日の状況は、戦後の高度成長、一国繁栄の方式が崩れ、国も企業も戦後を精算し、まったく新たな枠組み(パラダイム)を作り直さなければならない状況に直面しております。医療経営においても超高齢化、少子化の未曾有の時代にあって、世界のどこをみても見本はなくわれわれは社会保障全体の中での医療、福祉、介護の再編成の観点から自院の医療経営を構築していかなければなりません。
つぶれるはずがないと言われた銀行や大企業でさえ国家や株主、系列企業といえども助けてくれません。医療機関は地域医療計画に守られている、金融機関も公益的観点からつぶさないだろうなどと考えたら経営者失格です。
今日までの医療経営は、右肩上がりの経済環境にあっては、目先の国の医療政策に乗ってさえいれば、極論すれば誰がやっても、よほどの無茶をしなければ経営ができた時代でした。そこでは、医師会や各団体と仲良く競争せず、また、行政に遅れず、早まらず周囲に歩調を合わせる、いわば赤信号皆で渡れば恐くないが通用しました。
しかし今日、財政金融状勢から、国や自治体の補助金や助成金は先細り、民間金融機関は貸し渋り、厚生省がいくら頑張っても、大蔵省からの締めつけや通産省等他省庁からの改革圧力(具体的には民間企業の経営参入)、さらには米国主動の規制撤廃要求と市場参入圧力など、医療経営環境はますます厳しさを加え、一般企業並の環境にさらされつつあるといえます。
■認識を変えれば行動が変わる
どのような厳しい時代や環境にあっても、発展し成功する企業は必ずあるものです。すなわち、企業経営に優良可の3対4対3があるように30%の企業は常に間引かれる運命にあります。とくに優のリーダーたる30%になるためには、今までのやり方は適用しません。
医療経営の常識、たとえば「医療は非営利だ」とか「患者様などといったホテル並みのサービス業だ」とか「医療は広告宣伝をすべきでない」などといった認識では、本物の医療を自信をもってやり続けることは不可能と知らなければならない(拙著、『病院経営逆転の発想21』日本医療企画刊)。
今までの常識からの脱皮を行うには、理事長たる経営トップ自らが自己革新をすることが何よりも優先されなければならない。その有効な方法としては、
(1)素直に経営の現況を認識し危機意識を持つ。
(2)異業種や異文化に常に触れる。たとえば毎年必ず海外に出る。同業者の集まりより異業種の集まりで刺激を受ける。
(3)自分本来の念願やロマンを常に思い描く。
などによって、生き生きとした明るい発想が自ら生じるようになります。このような認識が強ければ強いほど、行動の変化も強力となるのです。
成功の果実=熱意×能力×考え方であり、経営トップであるからには熱意、能力は大なり小なり誰でもありますが、考え方の良否が経営の優劣を決定づけることを知らなければいけません。
■成功への習慣、体質作り
上記事項についての認識が変わっても、それが習慣化、体質化されなければ瞬発力とはなっても三日坊主となり、長続きはしない。自己革新が身につくためには、これらを常に行い続けることが大切です。
とくにロマンを描くことはプラス整想を生み出し、成功への確実なる果実をもたらす“根っ子”となるもので大切にして欲しい。
ロマンなき企業は、
(1)トップのヤル気や勇気が湧かず、失敗を恐れ、つらいことから逃げるようになる。職員も右へならうようになる。
(2)従業員に企業の魅力や希望をもたらすことができず、優れてヤル気のある職員が辞めてしまう。組織や職場の不拾性化の原因。
(3)地域社会やお客さんから評価されず、歓迎されない。
以上が定着すると企業生存30年と言われるように、それらの90%の企業は倒産に至ることになります。
次回からはケースによって述べていきます。
(1999年4月号掲載)
|