
塾長
野口哲英
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■基本中の基本はロマンを持つこと
経営の存続、発展の方程式は幾つかあるが、基本中の基本は何といっても経営トップがロマンを持つことに尽きる。
ロマンとは、自分自身が人生の中で生きざまとしてどうありたいか、何をしたいかということであり、かつ病院の経営トップとして病院がどうありたいのか、何をしたいのかということで、自己と病院が一体として、そこに全人生、全財産、全エネルギーをブチ込むことにほかならない。他人ごとや半身であったり、腰が引けたりしたら、これからの時代は間違いなく淘汰されよう。
また、存続・発展する企業のトップたる者は瞬発的なエネルギーの発揮やカリスマ性のある人よりも、愚直に言い続け、やり続ける人であり、トップの気力やエネルギーがなえたら当然、後継者としてふさわしい人を育てバトンタッチができる者である。
優れた企業にはかならずといって良いほど達成すべきロマンや目標があり、同時にその基本となる経営の理念がペアとして存在する。
以下実例によって優れた企業のロマンと理念について記そう。
■米国における例
1.ヒユーレットパッカード社
▽当社の任務 科学の発展と人類の幸福のために、きわめて優秀な電子機器を設計、開発、製造することである。
▽経営理念
株主のために利益をあげることを越えた責任を持つ。即ち従業員の人間としての尊厳と成果の共有。
2.ジョンソン&ジョンソン(J&J)
▽ロマン
人々の痛みと病気を軽<する。
▽経営理念
顧客への奉仕が第一、従業員と経営陣への奉仕が第二、社会への奉仕が第三、株主への奉仕が第四の序列とする。
3.メルク
▽使命
我々は人々の生命を維持し、生活を改善する仕事をしている。すべての活動は、この日標を達成できたかどうかを基準に評価されなければならない。
▽経営理念
誠実で正直であれ。企業として社会に責任を果たす。科学による革新を起こし模倣はしない。すべての点で超一流になる。人類に貢献する仕事以外からは利益をあげない。
■わが国における例
1.ソニー
▽会社創設の目的
技術開発することの喜びを感じ、それを社会に役立てる職場をつくる。日本の再建と文化向上に対して、技術・生産面でのサポート、優れた技術の国民生活への即時応用。
▽経営方針
不当なるもうけ主義を廃す。技術上の困難をむしろ歓迎する。一切の秩序を実力本位、人格主義の上に置く。
2.京セラ
▽企業債合
すべての従業員の物心両面における幸福を追求すると同時に、人類社会の進歩や発展に貢献すること。
▽社是
啓天愛人、公明正大
3.セブンイレブン
▽ロマン
顧客の求めている価値や文化とは何かを考え、その実頓に挑戦しよう。
▽基本方針
変化への対応と基本の徹底。
▽現場基本4原則
品揃え、売れ筋商品の吟味、クリーンネス、フレンドリーサービスの徹底。
以上、ごく一部の例を取り上げさせていただいたが、いずれにしても簡潔でわかりやすく、胸とどろかせる心のこもった文書であることが肝要である。
■病院経営塾の卒業生のビジョン
□相雲会小野田病院
病を癒し愉を分かち合い、健やかな人生を共に歩む
□小原病院
心を病む人達と共生、調和、発展をめざす
□冨田会成人病院
老人が老いて増々蘇り、家族が安心して共生できるための「老蘇村」ネットワークを創る
□ブレストペア難波病院
乳腺疾患に悩んでいる人々を一人でも多く救いたい。日本から世界へ。
□東陽階整形外科前原病院
人間は生命自身の存在がすでに目的である。当院は健全で豊かな高齢化社会へ貢献したい。
また、このビジョンに加えて、各院とも軽営理念はほぼ共通し、以下のように記されている。
《経常理念》
顧客の良きパートナーをめざす。社員にとってかけがえのない価値ある職場づくりをめざす。ともに勝ち得た成果を分かち合う。
(1999年5月号掲載)
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