レポート  【ヘルスケア施設づくりと経営】
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《ヘルスケア施設づくりと経営》

2006.03.30

〜経営計画に沿った建築計画〜

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前回は医療建築する上での基本的なスタンスを述べたが、今回からは更に具体的な手法を解説してゆきたい。

【経営計画に沿った施設作りを行う】 

建物設備はあくまでも経営を実現する重要な手段であり、計画以上であったり、計画以下であってはならない。ちなみに弊社では経営計画書はA3に1枚(図2)に重要な項目を網羅してもらうようにアドヴァイスしている。

 経営計画の概念は(図1)にように竹の節のように発展するイメージで立てる。

      
                        (図1)

 長期の5年のビジョン、中期3年のビジョン、短期この1年に遂行すべき課題。ビジョンとはロマン、理念、目標の総称です。まず、最も大切なことは長期のビジョンや目標を貫く経営の理念の基本が明確でなければならない。特に、ロマン
とは200床以下の中小病院の経営ではトップ自らの医療をやる上でそこにかける自分の命や夢である。

 例えば人の命を救いたい、病気を治したい、あるいは早期発見や予防で早期治療や軽いうちに治してあげたい。さらには地域の人達を病気にさせない。健康になってほしい。病気になってもADLを維持し、なるべく家庭復帰や社会復帰をしてもらいたい。等々であり、それに基づいた経営理念即ち患者さんと一体に
なった医療、共に働く従業員の幸せ、利益の還元や経営する者の姿勢などを明示する。前者が理想とする憲法ならば後者は犯してはならない法律の関係にある。これ等が明確になってこそ、その実現のための5年後の長期や3年後の具体的な収益・目標や建物設備の内容規模が設定される。

 例えば、新築移転して機能を一新パーキングを拡充する、増改築して新しい機能を加える。改装をしてイメージアップや機能改善をするなど計画される。

    
                      図2


                 【経営環境を把握する】

 今日の自院を取り巻く経営環境を分析する。
その目的はビジョンを実現する上でそのビジョンが果たして今、ここの環境において可能かどうか足元をしっかりと見るという意義の他に、もしロマンや目標がパッとひらめかない場合、この環境を分析して自院にとってチャンスかピンチか、自院の人・モノ・カネ・情報の4つの経営資源において強みや弱みがどこにあるのかを知って強みをどんどん強くしたあかつきにはどこまでそれがふくらみ、何が実現できるか、ひいてはそれがロマンの発見にもつなげられる意義がある。

(1)社会的環境 超高齢化、少子化社会における医療は、介護・福祉・さらには年金をも含め社会保障という大きな枠組みの中で国家の財政と国民の所得を勘案した軸組でとらえられる。それ故に医療・福祉のも聖域といった今までの発想は過去のものとなり、今や先進諸国に歩調を揃えたグローバルな視点でとらえられなければならない。DPCや定額医療、医療の介護へのシフト、施設から有料老人ホーム、株式会社の参入、果ては予防や代替医療を加えた混合診療など自院の経営における影響をしっかりと分析しなければならない、また地域特性としての人口構成や人口動態、ライバルの影響なども勘案しなければならない。

(2)人、とは自院の人材、経営陣や後継者、ドクターやコメディカル、事務職員などの人材における強み弱みの分析と計画達成する上で、人材をどう活性化するか、更には組織化するかの問題

(3)物とは、建物や設備の機能面やメンテナンス面において清潔、安心感、安全性、アメニティなどといった観点からチェックがなされなければならない。

(4)金とは、計画を実現する上での資金や人財等への投資への可能性や財務上の問題点を分析評価し、収益の改善や原価や費用の見直しもチェックされる。

(5)情報とは、電子カルテなどIT関連のこともさることながら、ここではマーケティング情報が重要である。例えば急性期病床や救急のニーズにおける自院のポジション、健診ニーズのマーケットサイズ、顧客獲得の方法などをはじめとして広報活動全般の自院の状況把握が重要である。


              【政策・課題】

 ビジョンと今ここの現況把握が終わったら、次に目標を達成するための具体的な政策が決められる。例えば、目標達成する上で共通のテーマとして3S(整理・整頓・清潔)の励行、人財の育成と確保、第三者評価等受審等を行い、短期の一年間は財務や既存健診分野の強化、人事考課など基盤の整備を行う。中期的には病院の移転やIT化、リハビリ部門の売上、長期的には在宅部門の強化、有料老人ホームの展開、サテライト診療所新設や医療機関のM&Aにまでを展開することも視野に入れるなどである。

 そして、目標達成のあかつきには10年間の売上高他、収益、利益、従業員の規模などを予測して、それに全力あげて職員が一体となって邁進していかなければならない。

代表取締役  野口哲英



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