メールマガジン【病院経営 存続から発展への道】

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《 病院経営 存続から発展への道 》

その101
2007.1.11

〜 医療 福祉 経営と禅 その8〜 

”患者 一体一如 ”

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最近、医療機関においては半ば常識的に“患者さま、診させていただく”という面映い言葉が使われ、患者側は何となくこそばゆく違和感をもって聞いている人が多い。旧厚生省が医療はサービス業であると宣言してから、給食の適時適温、インフォームドコンセントや情報提供といった面を診療報酬化して誘導した結果、患者側もそれ以後、急速に権利主張を強めるといった状況を生み出してきた。ここに至って医療側から率先して“様づけ”で患者に接することが顧客獲得の手法、顧客づくりとして広まってきたきらいがある。     

さて、このような呼び方は果たして“本物の医療を提供する” ことにおいてふさわしいと言えるであろうか。本当に心から“患者さま”と言っているであろうか。実際は理事長や院長のトップが強制的に職員に言わせているところが多く、本当は言いたくないと思っているコメディカルの人が多いのが実情ではないだろうか。しかも、全職員が様づけで呼んでいるならまだしも、トップや医師達においてはさんづけで呼んでいるのが現実である。      

多くの医療機関がライバルや周辺の施設がそのように言っているから付和雷同的に“様づけ”を取り入れているところが多く、経営者の主体性が問われるところである。     


ともあれこのような呼び方は患者さんに対して医療側との間に上下や差別意識の壁をつくることになり、受け手と与え手が真に一体となれないのである。特に医療においては患者の不安や苦病の原因を正確に知ることが大切であり、それには患者と一体になることであり、患者の苦痛は自分の苦痛、患者の喜びは自分の喜びに感じてこそ患者は信頼と感謝の気持ちが生まれ、結果として完全に自分を医療側にゆだねることになるのである。     


「医療は医師やコメディカルが治すのではなく、患者が自ら治す手助けをするだけだ。」という名医達の言葉が示すように、安心感、信頼感そして病気に立ち向かう勇気を与えるのが医師達の役割である。そうであるならば患者と共に治癒に向かって一体となって行動する。即ち一如(又は一如行)が更に大切な条件となってくる。診させていただくとか、治療させていただくといった一見へりくだった言い方に対して真に仁愛をもった医師ならば苦痛や命の危険がせまっているのであれば、他人ごとではなく、 自分のこととして思わず手が出る、診ずにはいられないといった心が求められよう。菩提薩ta四摂法に示される布施、愛語、利行、同時はまさに医療者に求められる要件であり、利行は利他すなわち自己を忘れて相手に尽くすことであり、これは相手と一体一如 と同義であり、結果として自利すなわち医療側が自分の満足となって返ってくるものである。

  以上でおわかりのように“患者さま”や“誰々ちゃん”呼ばわりすることはやめて、自然に出る言葉“誰々さん”が最もふさわしいのではないだろうか。



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